Teacher Aide Diary

Teacher Aideのメンバーが活動のようす、思いを綴ります。

【特集完全版】「学校インターン」のしくみを実現させたい!次世代教員養成プログラム「TEST」 #先生を助けたい…!若者たちの挑戦。

今回は、雑誌版Paraplyでは、紹介しきれなかった内容をお届けします。

現在、埼玉県戸田市において進められている次世代教員養成プログラム「TEST」。「TEST」は、なぜ始まったのか、そして何を解決することができるのでしょうか。「学校インターン」という新しい仕組みに迫ります。

 

Q1. 「TEST(テスト)」とは

 「TEST」とは、教員・教育業界を志望する大学生向けの、次世代教員養成プログラムです。学校へのインターンを通じて、学校現場の解像度を上げ、今の自分に必要な能力を仲間と切磋琢磨しながら高め合うプログラムとなっています。

 選考とその合否を経た学生は、埼玉県戸田市の公立小・中学校を舞台に、「TEST ASSISTANT(以下、TA)」として週に1~2回ほど学校現場に入っていただきます。そして、同じチームのTAと週に一度のミーティングで情報共有と内省・振り返りを行います。また、TA全体で約1ヵ月に一度、自身の体験をもとに学校現場や教育業界に感じた課題について検討し、最終的に各々が配属された学校へのアプローチに挑戦します。

 学校現場・教育業界で変革を起こすためには、生徒・児童はもちろん、保護者の方々や企業の方々、そして現場で働く先生方との信頼関係が重要です。このインターンでは、現場で与えられた業務に取り組んでいくことだけでなく、自ら主体的・能動的に行動することが求められます。現場で感じた違和感や気づきを一人で抱え込むのではなく、次世代の教育を担う仲間と共に考え抜き、課題を解決する。この経験が学生にとって、また学校現場・教育業界全体にとって良いものとなるよう、運営も全力でバックアップしています!

 

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「学校インターン」として新しい仕組みを目指した
(「TEST」クラウドファンディングより)

Q2. 「TEST」を始めたきっかけ

 「TEST」のはじまりは、埼玉県戸田市の学校・教育委員会と、同じ学区で学童を運営されているmerry atticさんのお声がけでした。COVID-19(以下、新型コロナ)により学級閉鎖を余儀なくされた学校現場では、当時授業の進行スケジュールが大幅に崩れ、生徒・児童も学校で生活ができない、先生もどうしていいか分からない……といった社会問題が多くみられていました。マスク着用のもとに再開された学校現場では、黙食やアルコール除菌、遅れた授業の取り戻しなど新型コロナに由来する業務が増すばかりで、ただでさえ忙しい教員の手が余計に不足する事態となってしまったのです。

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公立小学校教員の労働実態。1週間で40時間以上の学内労働をする教員がほとんどである。
(「TEST」クラウドファンディングより)

 

そこで私たちは、共同プロジェクトとして、次世代教員養成プログラム「TEST」を立ち上げました。学校現場は、たとえ新任でも、赴任してすぐに「一人の先生」としての自立を求められる世界です。しかし、先生になる前の学生をインターンとして教室や先生のサポートに付けることで、先生個人の負担は軽減されるはず。そして学生は、目の前の先生の動きを見ながら業務の一端を経験することで、自分が将来教員になることへの解像度を上げながら成長し、より実践的な能力を培っていくことができるのではないかと考えました。

 「​​現場の負担をポジティブに、摩擦なく改善する」と同時に、次世代の教育の担い手である学生の成長機会を創り出す。そうすれば、①大学で教職課程を履修したは良かったものの、これまでに教育実習やボランティアという数少ない実践期間でしか現場を体感できずに、自分の将来への不安や教職の偏ったイメージを抱えたままの学生を救うことができるのではないか。また、②ただ労働負担を減らすだけでなく、後進育成に発展させることができれば、教員の質が上がり、これからの学校現場をより良く変えていくことができるのではないか。そして、③今の日本の学校現場・教育業界はもちろんのこと、日本の未来、次世代を担う子どもたちにも還元していくことができるのではないか。こうした3つの仮説を軸に、次世代教員養成プログラム「TEST」は埼玉県戸田市を実証区域として誕生しました。

 

Q3. 「TEST」という名の由来

 まず1つは、語呂の良さです(笑)。アルファベット4文字で「TEST」、カタカナにして三文字で「テスト」というのは耳馴染みがよく、表記も間違いにくいですよね。綴りも簡単で身近な単語ですし、学校現場や教育業界に限らず、誰もが知っている馴染みのある言葉です。冗談でもなんでもなく、プロジェクトやサービス、新しい事業に名前をつけるときは、結構本気で語呂を気にしています

 もちろん、語呂だけでは想いは伝わらないので、それこそ語呂以上に意味合いといったものも重要視しています。「TEST」の語源はそのまま「試験」という英単語からきているのですが、これは「TEST」が教員・教育を志す学生の「試験」、いわば登竜門となってほしいという想いがあったからです。

 一般的に「試験」というのは、ある教育課程においてクリアすれば一定の社会的な評価を得られ、その能力や結果に対してお墨付きがもらえるというものです。どんな資格でも大学の単位でも、さまざまな能力判定や合否判定、評価の基準として「試験」は社会に根付いています。私たちは、このプログラムを経験した学生が、自分自身はもちろん、社会的にも認められやすいような名前にしたかったのです

 学校現場でのインターンで、自分に必要な能力を実感し、それを身に着け成長した彼らが、自信を持って、胸を張って新たな学校現場や教育現場へ飛び込んでいく。そして、今はボランティアや教育実習でしか培うことのできない現場経験を、学生時代から当たり前のものとして経験してきた教員や教育家が増えれば、きっとこれからの日本の教育はもっと良くなっていく。ここには、TOEICや教員採用試験のように、教員や教育業界を志望する学生が当たり前のように受けるものになってほしいという願いも込めています。

 そうして、「TEST」を経て教員になった、「TEST」を受けて大変だったけど良い経験になった、といったような使われ方をされたら最高だなあと思っていました(笑)昨年度(2020年)のTA1期生が来年度から教員の職に就くようなので、そうなる未来もすぐ近くまで迫ってきていますね。

 

Q4. 「TEST」が持つ働き方改革への可能性

 次世代教員養成プログラム「TEST」は、学校で働かれている教員の方々への負担を軽減できるものとして構想されたインターン制度です。

 このインターンがわたしたちの想定する形で機能すれば、学校においての働き方改革の一助として役立つことができる。教員にとっても学生にとってもwin-winでハッピー、負担軽減しながら後進育成、煩雑な業務に追われていた先生と未来あるキラキラした学生が一緒になって子どもたちの成長に成長に携わることで、生徒・児童への教育はより手厚いものとなり教育の質は向上、これが日本全体に普及すれば保護者にとっても日本の未来にとっても良いことだらけ! 夢と希望溢れる、次世代教員養成プログラム「TEST」です。

 

 しかし、現実問題、目に見える形でそれが為せているかと問われると、なかなか難しい問題です。解決すべき課題は山のようにあります。また学生一人を学校にインターンさせるだけでも、運営・学校・教育委員会の関係者が日々対応に追われています。これだけでも、だいぶ担当者の皆さまにとっては負担になっていますね(笑)。教育実習やボランティアにも言えることですが、順風満帆、問題が何もなくとも、学生が学校に入ることで発生する負担は避けられないものです。何もなくても負担だというのにも関わらず、受け入れてくださる教育関係者の皆さまには、本当に頭が上がりません。一歩間違って何か問題が起これば、それ以上の負担になってしまうこともあります

 そのため、ここで発生した負担を取り返す勢いで、関係者の皆さまが納得するくらいに教員の方々への負担を軽減させる必要があります。そして、この次世代教員養成プログラム「TEST」には、それができるという確信があります。

 短期的・短絡的に見ると「ちょっと学生が働いただけで学校現場の忙しさは変わらないでしょ」と思われてしまうかもしれません。「学校現場で教員の仕事をどこまで学生に任せることができるのか」という点についても、苦言を多くいただきます。しかし、それと同じくらい、現場の先生方の「助かった!」というお声をいただいてもいます。「今まで40人の生徒を1人で見ていたのが、2人になったために授業の指導負担が減った」「TAがプリントを印刷してきてくれたからこの仕事が終わらせられた」「急な生徒指導・保護者対応が発生したがTAが生徒を見てくれていたからどちらも無事に終わった」など、今までのワンマンな教室経営とは異なる、より教員の方々の行動の幅が広がりパフォーマンスを発揮できるような環境に寄与することもできています

 プログラムが実証実験中ということもあり、学生がインターンをすることで減る教員一人あたりの負担は、それに伴う関係者の業務負担と同じくらいなのかもしれません。わたしたちも、まだまだ改良の余地があると思っていますし、本年度も昨年度の反省を踏まえてプログラムがより良いものとなるように改修・改善を行っています。しかし、このプログラムは確実に教育現場の働き方改革に、良い影響を与えることができているのではないでしょうか

 さらに長期的な目線に立つと、こんなメリットも挙げられます。それは、インターンとして入る学生たちが将来現場に立つときに、TAを経験しているならではの価値を発揮し、学校現場の働き方改革に寄与することができる、というものです。

 次世代教員養成プログラム「TEST」は、このインターンシップ全体が次世代の教育を担う若者への研修プログラムになっています。入って終わり、体験してみて終了の単発職場体験ではなく、毎週の情報共有と内省を繰り返し、学生たちは次にインターンに入る日にその成長を「実践」という形で還元します。学生が教育現場で体感し、行動の中で学んだことを、次の行動に活かす。得た気づきの中で、自分が動いて変えられる範囲の課題を解決する。自分だけではどうにもならないことを仲間と共に考え抜き解決する。ここで得た経験や思考は、「TEST」を修了しても彼らの記憶や習慣に色濃く残るでしょう。 

 

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「TEST」における三者の関係
(「TEST」クラウドファンディングより)

このような、いわば課題解決型人材が未来の学校現場・教育業界に入ることによって、教員の労働負担は確実に軽減します。今現在、教員・先生という職には、こういった人材が集まりにくい傾向にあります。ここには、数多くの原因があるでしょう。昨今の社会問題により教職自体に魅力を感じられないという学生が増えているといった理由から、教員が年功序列で安定している職業だからという理由などもあるかもしれません。しかし、このプログラムを経験することで、学生はこれらの能力が身につき、周囲へ良い影響を及ぼす行動ができるように成長します。彼らが教員になった時、そしてより大きな範囲へ影響を及ぼす行動ができるようになった暁には、その現場で働き方改革をはじめとしたより学校現場・教育業界における課題解決が「実践」されるのではないでしょうか。また、自分が経験しているからこそ、今度は自分がインターン生、そして教育実習生やボランティアを受け入れる側に立ったときに、学生の価値を最大限に発揮させることができるようになるのではないでしょうか。「机上の空論」にも思えるかもしれませんが、わたしたちはこうなる未来を見据えて、次世代教員養成プログラム「TEST」を運営しています。

 

Q5. 「TEST」で解決したい教育現場の課題

 私たちが今の教育現場の課題だと感じているところは、2つあります。

 1つ目は、日本の教育実習期間がとても少ないという課題です。

 日本の学生が教員になるまで、どれだけ現場を経験できるか知っていますか?答えは平均1ヶ月。教育実習期間中、学生の大部分は「今までに経験してこなかった資料制作や授業準備」に追われています。生徒との実質的な関わりを学ぶためには1ヶ月ではとても足りません。学校現場には様々な仕事があり、資料や授業をつくること、子供との関わり方を学ぶことはもちろん大事ですが、それだけでは先生としてうまくやっていくことは難しいです。それにも関わらず、新任の先生は赴任したその日から「一人前」であることを求められてしまう現状。

 

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教育実習の時間に関する国際比較
(「TEST」クラウドファンディングより)

 

「TEST」では、学校に入る前の選考・研修は、教育委員会の方や教員経験者の方のワークショップを行ったり、学童で子どもたちにどう対応するかを学ぶところから始まります。学校に入ってからも、参加学生が定期的に振り返りや内省をする場が充実しています。実務での学びを学問と結びつけたり、仲間と情報を交換したりする機会がたくさんあります。その中で、先生に必要なスキルを見つけ、自分に足りないスキルを高めていくことが可能なのです。

 2つ目は、教員があまりにも忙しすぎて人が足りていないという課題です。
 過労死ラインを超える勤務を繰り返す教員は、小学校3割、中学校になると6割を超えます。教員は子どもの笑顔を作る仕事なのに、教員自身が笑顔で働けない現実。そのため、前向きな気持ちで教員を目指す学生もガクッと減っています

 実際に、教員採用試験の倍率が定員ギリギリの自治体も。それでも学校が走り続けられるのは、「先生の献身性」のおかげ。学校の人手不足は深刻な問題となっています。頑張っている先生方が過労で疲弊し、潰れてしまう姿が「よくあること」なのは、解決するべき大きな課題です。このままでは、学生に限らず、日本の子どもたちの未来を担う若手人材が減るばかりです。「TEST」はインターンとして、ボランティアよりも教育実習生よりも質の高い教育家人材を輩出する、次世代教員養成プログラムです。自発的に業務へ取り組み、能動的な人間へと成長しながら活動する熱意のある学生ならば。現場の経験を積むことと同時に、現場の負担を軽減していくことが可能なのではないでしょうか。

 

Q6. この活動を通して望む教育現場の未来

 最終的には、この価値が生徒・児童に還元されること、そして日本の教育がより良いものとなっていくことを目指しています。教育に携わる先生の労働負担を減らし、教育を志す学生の後進育成を促し、辿り着く先は「学校インターン」という制度が当たり前になって教育に携わる全ての人々が笑顔になる未来です。

 日本の教育を世界各国と比較して論じるものは多くありますが、今の日本の教育を進化させていくためには、今この瞬間に日本の教育業界・学校現場にない制度と人材が必要なのではないでしょうか。次世代教員養成プログラム「TEST」を日本全国に普及させ、多くの自治体・学校と提携していくことによって、より良い人材を増やしていく。彼らが成長し多くの学校に新しい風を吹かせていくことによって、日本の教育はより明るく輝かしいものになっていくのではないでしょうか。

 

Q7. 最後に

 次世代教員養成プログラム「TEST」では、学校現場にインターンをしたい、もっと学校現場でのリアルな経験を積みたい!という意欲のある、次の「TEST ASSISTANT」候補を募集しています。

  • 埼玉県戸田市の公立小学校に、週1~2回直接訪問をしてインターンができる
  • 自分なりに学校教育に対する考えの軸がある、建設的な議論ができる
  • 困った際、一人で抱え込まずに周りに助けを求められる

 以上の条件に当てはまる方、まずはカジュアルに1on1面談でお話してみませんか? 選考過程においては大学・学部・学年など、どの属性であっても同じ基準で選考させていただきます。

 生きた実践を学びたい学生、学校現場をよりリアルに体験したい学生に、このプログラムにご参加いただきたいと思っています。次世代の教育の担い手である、熱意あふれる皆様のご参加をお待ちしております!

 

test.lightful.jp

 

(次世代教員養成プログラム「TEST」運営事務局/lightful副代表 塚田咲良)